洗濯物を外に干している間ににわか雨などの急な雨。
雨で濡れた洗濯物をどうするか悩みますよね。
特に洗濯物が雨で少し濡れただけの場合は、洗い直さずにそのまま部屋干しなどで乾かしてしまおうか迷ってしまいます。
でも、ちょっと待ってください。
雨はたぶんあなたの想像している以上に汚いので、雨に濡れた洗濯物は洗い直したほうがいいですよ。
雨には以下の物質や生物が含まれる可能性があります。
雨に含まれる物質や生物(エアロゾル)(参考文献1,2)
・海水からの海塩粒子(主に塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)
・工場や自動車からの排ガス[煤(すす、黒色炭素粒子)や石油系炭化水素]
・土壌から放出されるイオウ酸化物、窒素酸化物、アンモニア等の物質
・天然の鉱物粒子
・黄砂
・火山灰
・細菌
・カビ
・海洋の微細藻類
・花粉
・朽葉
・植物の葉表面からのワックス粒子
とくに降り始めの雨やにわか雨には大気中を浮遊していたこれらの物質や生物が濃縮されています。
また、最近の研究から雨の中には生きた細菌が含まれていることが明らかになってきました。
この中には病気を引き起こす可能性がある細菌も存在します。
雨に濡れた洗濯物をそのまま室内干しにすると、洗濯物が乾くまでに時間がかかり、雨に由来した細菌が増えることも懸念されます。
そのため、除菌効果のある漂白剤などを使用して、もう一度洗濯することをおすすめします。
以下では、ライフサイエンス系博士(本ブログの管理人)が、雨で濡れた洗濯物を洗い直したほうがいい理由をもう少し詳しく説明します。
目次
雨が降る仕組み(雨が降るには微粒子が必要)
大気中の水蒸気はそれだけでは水滴になることができず、雨として降ってくることはありません(参考文献1)。
大気中で水蒸気が水滴となるためには核となる微粒子が必要で、この核はエアロゾルとよばれます。
エアロゾルに水蒸気が吸着して小さな水滴(雲を構成する雲粒)となり、それが互いに衝突・併合を繰り返しながら大きな水滴(雨粒)となり地上へ落下して雨となります。
そのため、雨には核となったエアロゾルが含まれています。
そして、このエアロゾルとなる微粒子が上で紹介した「雨に含まれる物質や生物」であり、雨に含まれることになります。
近年の研究から、特に細菌がエアロゾルとなっている場合に雨が降りやすいことがわかってきています(参考文献1,2)。
大気中には多くのエアロゾルが漂っている
上記のようにエアロゾルの一部は雨粒形成の核になるものもありますが、多くは大気中を漂っています。
エアロゾルは粒子の直径によりPM10やPM2.5と呼ばれることもあります。
PM2.5という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
サイズの小さいPM2.5は肺から血中に取り込まれて、循環器疾患を引き起こすとも言われています(参考文献3)。
光化学スモッグ発生時に白く霞んで見えるのはエアロゾルが原因であるなど、大気中には多くのエアロゾルが漂っています。
エアロゾルの1つである細菌は、大気1 m3あたりに100~1,000,000個の細胞が浮遊すると報告されています(参考文献4)。
これらのエアロゾルは気流に乗って移動し、日本は大陸からの越境汚染も受けています(参考文献3)。
雨に含まれて大気中のエアロゾル(汚れ)が降ってくる
雨が降ると、大気中のエアロゾルは上方から落下してくる雨粒に捕捉されて地上に一緒に降ってきます(参考文献3)。
エアロゾルは汚れといえる物質や細菌です。
PM2.5も含まれます。
とくに降り始めの雨やにわか雨は大気中のエアロゾルを多く含むことになり、とても汚いです。
雨には生きた細菌が含まれている
日本の場合、1 mLの雨には約23,000個の細菌が含まれていることが報告されています(参考文献5)。
そのうちの約80%の細菌が生きています。
その中には、動物や人間の糞便に関連する細菌[Bacteroidales(バクテロイデス)目細菌、Clostridiales(クロストリジウム)目細菌、Fusobacterium(フソバクテリウム)属細菌]が含まれていて、特に2月と3月の雨に多く含まれる傾向があります(参考文献6)。
他にも動物や人間の糞便に関連するEnterococcus(エンテロコッカス)属細菌やEscherichia(エスケリキア)属細菌(大腸菌など)、Streptococcus(ストレプトコッカス)属細菌(レンサ球菌)が雨には含まれます。
これらの糞便に関連する細菌は病原性を示す可能性があります。
さらに、雨にはVibrio(ビブリオ)属細菌やStaphylococcus(スタフィロコッカス)属細菌(ブドウ球菌)、Acinetobacter(アシネトバクター)属細菌、Sphingomonas(スフィンゴモナス)属細菌などの感染症を引き起こす可能性がある細菌も含まれています。
雨に濡れた洗濯物は汚れている
以上で説明したように、雨には汚れといえる物質(PM2.5も含む)と細菌(病原性の懸念もある)が含まれています。
洗濯物が雨に濡れてしまうとこれらの汚れが付着してしまいます。
雨に濡れたのが少しだからといってそのまま室内干しなどで乾かしてしまうと、汚れが付着したままになります。
さらに、干している間に洗濯物の中で雨に由来した細菌が増える可能性もあります。
細菌まみれでPM2.5を含む汚れが付着した衣類やタオルがお好みの場合は洗い直す必要はありませんが、そうでないなら雨に濡れた洗濯物を洗い直すことをおすすめします。
雨で濡れた洗濯物の洗い直しには除菌ができる漂白剤の使用がおすすめ
雨に濡れた洗濯物には細菌が付着している可能性が高いので、洗い直しには洗濯用洗剤とともに除菌効果のある漂白剤を使用することをおすすめします。
(漂白剤入りの洗濯用洗剤でもOK!)
洗濯後に雨が降っていて部屋干しになる場合は、洗濯物にアルコールスプレー(70%のエタノール溶液)をスプレーしておくと、干している際の細菌の増殖を抑えられます(但し、アルコールで変色する衣類もあるので注意してください)。
アルコールスプレー(70%のエタノール溶液)は市販品を使用してもいいですが自分で作ることもできます。自作方法を別記事「お風呂のピンク汚れの原因はカビじゃない?本当の原因を知って対処!」に書いているので、よかったら読んでみてください。
まとめ
雨には汚れといえる物質(PM2.5も含む)や細菌(病原性の懸念もある)が含まれています。
とくに降り始めの雨やにわか雨には大気中を浮遊していたこれらの物質や細菌が濃縮されています。
そのため、雨に濡れた洗濯物は汚れており、洗い直すことをおすすめします。
参考文献
- 夏目崇匡, 鈴木款. 降水中の微生物粒子の存在量. 静岡大学地球科学研究報告 2001 28:57-65.
- 鈴木款, カサレト・ベアトリス. バイオエアロゾルの環境における役割プラスとマイナス. 低温生物工学会誌 2014 60(1):17-22.
- 竹村俊彦. 物を運ぶ風 —大気中での微粒子の輸送過程—. 日本風工学会誌 2012 37(3):192-197.
- Ruiz-Gil T et al. Airborne bacterial communities of outdoor environments and their associated influencing factors. Environ Int 2020 145:106156.
- Hu W et al. Bacterial abundance and viability in rainwater associated with cyclones, stationary fronts and typhoons in southwestern Japan. Atmos Environ 2017 167:104-115.
- Hu W et al. Bacterial community composition in rainwater associated with synoptic weather in an area downwind of the Asian continent. Sci Total Environ 2017 601-602:1775-1784.
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