身近なマメ科植物であるカラスノエンドウ。
花の後に豆のさやをつけることからもマメ科植物であることがよくわかります。
多くのマメ科植物の根(根粒)には窒素固定を行う根粒菌が共生しますが、カラスノエンドウの根にも根粒菌が共生します。
根粒菌が行う窒素固定の恩恵を受けて、カラスノエンドウはやせた土地でも生育できます。
カラスノエンドウ
カラスノエンドウ(烏野豌豆)
学名:Vicia sativa ssp. nigra
別名:ヤハズエンドウ
分類:マメ科ソラマメ属
花期:3~5月
分布:本州、四国、九州、沖縄
つる性の2年草。
色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑(1)
花は小さいが、鮮やかな赤紫色なので見つけやすい。
葉腋に蝶形の花が1~3個つき、長さは1.2~1.8 cm。
小葉は巻きひげとなってからみつき、普通先端は3つに分かれる。
草丈は1 mほどで高くは伸びない。
3~5 cmの細長い豆果(さや)をつける。
さやは乾燥するとよじれるように2つに裂けて5~10個の種子をはじき飛ばす。
カラスの名前は、この熟したさやが真っ黒になることに由来する。
根粒菌と共生するカラスノエンドウ
カラスノエンドウの根には根粒が存在し、その中には根粒菌(土壌由来の特定の細菌:Rhizobium leguminosarum biovar viciae)が共生しています(2)。
この根粒菌には、空気中の窒素分子をアンモニアに変換する特殊な能力があります(この変換プロセスを窒素固定といいます)。
根粒菌の窒素固定のおかげで、カラスノエンドウは生育に必要なアンモニウム塩や硝酸塩などの窒素化合物を土壌以外から得ることができ、窒素化合物が欠乏したやせた土壌でも生育することができます。
やせた土壌での生育は、他の植物との競合を回避できるという利点があります。
また、カラスノエンドウが生育した土壌には窒素化合物が供給されるため、やせた土壌を肥やす効果もあります。
根粒を切断すると内部に赤い色素が認められます。
これはレグヘモグロビンという鉄を含む赤いタンパク質の色です(3)。
カラスノエンドウと根粒菌それぞれ単独ではレグヘモグロビンを合成できませんが、共生して相互作用することによりレグヘモグロビンが形成されるようになると考えられています。
レグヘモグロビンは根粒内の遊離酸素濃度を低くかつ一定の量に保ち、根粒菌が窒素固定を行いやすい環境をつくっています。
カラスノエンドウは食べられる?
文献(4)でカラスノエンドウの食べ方が紹介されています。
花が咲く前の若菜はゆでて、あえもの、サラダ、おひたしに、
開花後は若いさやを天ぷら、油いため、ソテー、あえもの(ピーナッツ、クルミあえによい)にできるそうです。
ただし、食中毒事例(5)もあるようなので食べることはあまりおすすめしません。
参考文献
- 高橋修, 藤井伸二(監修). 色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑. ナツメ社 2014.
- Laus MC, Kijne JW. 黒幕による服装指定:根粒共生における表面多糖と宿主植物特異性. Trends Glycosci Glycotechnol 2004 16:281-290.
- Madigan et al. Brock 微生物学. オーム社 2003.
- 越尾淑子. 野草の食べ方. 東京家政大学博物館紀要 2000 5:95-110.
- 登田美桜ら. 過去50年間のわが国の高等植物による食中毒事例の傾向. 食品衛生学雑誌 2014 55(1):55-63.