春の道端に咲き、風に揺れるナガミヒナゲシのオレンジの花。
この花は1日で散ってしまい、はかない花です。
一方、外来種であるナガミヒナゲシの繁殖力は力強く、1990年代後半から生育地を大きく拡大しています。
昔は咲いていなかった地域でナガミヒナゲシの花が咲くようになり、昔と今とでは道端の風景も変わっています。
ナガミヒナゲシ
ナガミヒナゲシ(長実雛罌粟)
学名:Papaver dubium
分類:ケシ科ケシ属
花期:4~5月
分布:地中海沿岸原産、日本全土に帰化
花が咲く前のつぼみはうつむきかげんにつき、開花とともに上を向く。
色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑(1)
茎の頂点に、橙紅色から紅色の美しい花を咲かせる。
花の直径は3~6 cmで、朝開き、夕方には落ちてしまう。
果実はふたのついたシャンパングラスのような形をして細長く、名前の由来になった。
熟すとふた下部の孔から小さな種子がでてくる。
草丈は20~60 cmで幅があるが、高さが15 cm程度で低くても花をつける。
葉は1~2回羽状に深く切れ込み、毛が多い。
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生育地域を拡大するナガミヒナゲシ
ナガミヒナゲシは、1961年に初めて東京都世田谷区で帰化が記録され、近年では、各地で道路周辺、市街地の公園や空地で増加しています(2,3)。
園芸植物としてではなく、非意図的に日本に侵入し生育地域が拡大したと考えられています(2)。
1990年代後半から生育地数が急激に増加していますが、近年の温暖化がナガミヒナゲシの生育地拡大と関係している可能性があります(2)。
また、自動車のタイヤにナガミヒナゲシの種子が付着して長距離を移動し散布されることが生育地の拡大につながったと考えられています(4)。
参考文献
- 高橋修, 藤井伸二(監修). 色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑. ナツメ社 2014.
- 吉田光司ら. 日本列島におけるナガミヒナゲシ(Papaver dubium L.)の生育地の拡大. 雑草研究 2008 53(3):134-137.
- 清水建美. 「日本の帰化植物」. 平凡社 2003 79.
- 吉田光司ら. 都市におけるナガミヒナゲシ(Papaver dubium)の生育地拡大要因. 東京農大農学集報 2009 54(1):10-14.