うすいピンクのアサガオに似た花の野草を見かけてヒルガオと思っていましたが、よく調べてみるとコヒルガオでした。
さらに、コヒルガオとヒルガオの間には両種の種間雑種アイノコヒルガオも存在するとのこと。
ちょっとややこしいです。
アイノコヒルガオの多くは、コヒルガオが胚珠親となり、ヒルガオの花粉を受け取ることによって生じるようです。
コヒルガオ
コヒルガオ(小昼顔)
学名:Calystegia hederacea
分類:ヒルガオ科ヒルガオ属
花期:6~8月
分布:本州、四国、九州
ヒルガオに比べて花や葉が小形なことから名づけられた。
色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑(1)
つる性の多年草で、つるはほかのものに左巻きにからみついて1~2 m伸びる。
花の大きさは直径3 cm程度で、淡紅色。
ヒルガオと見分けるポイントは、コヒルガオは花柄の上部に縮れたひれ(翼)があること。
これは本種だけの大きな特徴。
コヒルガオの葉の基部は張り出し、さらに2つに分かれる。
一方、ヒルガオの葉の基部は張り出すが、2つに分かれない違いがある。
地下茎を深く張りめぐらせているので、地上部をいくら刈っても地下茎は残り、再び生長を始める。
乾燥に強く、日当たりのよい道端や荒地に生える。
コヒルガオは自家不和合性
コヒルガオは、野外では周囲のクローン個体から自家受粉を主に受け取っていますが、自家不和合性をもつため、ほとんど種子を結実できません(2)。
そのため、根茎による栄養繁殖によってコヒルガオの集団は維持されていると考えられています。
コヒルガオとヒルガオの間の雑種アイノコヒルガオ
ヒルガオ属における種間雑種は、人工的、並びに自然条件下で容易に形成されることが知られています(2)。
そのため、コヒルガオとヒルガオの中間的な形態を示す個体も存在し、このような個体は両種の種間雑種アイノコヒルガオとされています。
コヒルガオ、ヒルガオ、アイノコヒルガオの形態的な違いに関しては、2018年の研究論文(第2表)(2)にまとめられているので、それが参考になります。
2018年の研究論文(第2表)に記載の形態的差異の特徴(2)
コヒルガオ
花冠直径:3-4 cm
葉形態:側裂片の頂点をつなぐ直線がすべて葉身を通る
苞葉の形態:先端が完全に鋭頭
花柄の翼:縮れた翼がみられる
ヒルガオ
花冠直径:5-6 cm
葉形態:側裂片の頂点をつなぐ直線が葉身を通らない
苞葉の形態:先端が完全に鈍頭
花柄の翼:翼は全く見られない
種間雑種(アイノコヒルガオ)
花冠直径:4-5 cm
葉形態:側裂片の頂点をつなぐ直線が一部葉身を通る
苞葉の形態:先端が不完全に鈍頭(鋭頭)
花柄の翼:稜は見られるが翼は低く縮れていない
野外の種間雑種(アイノコヒルガオ)は、主にコヒルガオがヒルガオの花粉を受け取ることによって生じることが研究から示唆されています(2)。
自家不和合性のコヒルガオが結実している場合は、それは種間雑種(アイノコヒルガオ)の種子かもしれません。
参考文献
- 高橋修, 藤井伸二(監修). 色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑. ナツメ社 2014.
- 篠原義典, 市野隆雄. 長野県松本市におけるヒルガオとコヒルガオの雑種(アイノコヒルガオ)の分布と非対称的な交雑. 雑草研究 2018 63(2):15-22.