一般的にイタチと呼ばれる動物にはニホンイタチとシベリアイタチ(旧和名:チョウセンイタチ)の2種類があります。
シベリアイタチに関しては、以前はチョウセンイタチと呼ばれていましたが、「環境省レッドリスト2020」で和名がシベリアイタチに変更されました。
シベリアイタチは西日本に分布していて、関西などの都市圏を中心に人家の屋根裏(天井裏)などに侵入する被害が多く起きています。
もし、西日本に在住でイタチの被害にあわれた場合は、シベリアイタチによる可能性がとても高くなります。
一方、西日本以外の地域でイタチの被害にあわれた場合は、ニホンイタチが原因である可能性が高いです。
ここでは、ニホンイタチとシベリアイタチについて、ライフサイエンス系博士(本ブログの管理人)が詳しく解説します。
また、イタチの種類に関係なく、イタチの被害にあわれた場合は早めに駆除することが大切です。
ただし、イタチは鳥獣保護法により無許可での捕獲や殺処理は禁止されているので注意してください。
無理せずに最初から害獣駆除業者に駆除を依頼することをおすすめします。
目次
ニホンイタチとは
ニホンイタチ(Mustela itat)は、日本固有種で日本全域に分布します(参考文献1)。
もともとは本州、四国、九州、および屋久島、種子島、佐渡島等の島嶼に自然分布していましたが、ネズミ駆除などの目的で北海道やいくつかの島々に移入分布しています。
シベリアイタチと分布を接している西日本では、シベリアイタチに平地から追いやられた結果、山間部にニホンイタチが分布していると考えられています(参考文献2)。
シベリアイタチと競合しない西日本以外の地域でもニホンイタチの生息環境は厳しくなっており、都市化の進行によって個体数が減少している可能性が懸念されています(参考文献3)。
一方、ネズミ駆除などの目的で本来は分布しない地域に持ち込まれた移入分布のニホンイタチは、生態系に大きな被害を与えており、害獣(侵略的外来種ワースト100)となっています。
ニホンイタチの形態的な特徴
全身山吹色ですが、額中央部から鼻鏡部にかけて他の部分と区別できる濃褐色の斑紋があります(参考文献4)。
雄(オス)のほうが雌(メス)よりもが体長が大きく、雌の大きさは雄のイタチの1/2~2/3程度しかありません。
- 頭胴長:雄27~37 cm、雌16~25 cm
- 尾長:雄12~16 cm、雌7~9 cm
- 体重:雄290~650 g、雌115~175 g
成長ともに尾率が大きくなりますが、成獣の尾率(尾長/頭胴長)は雌雄とも50%を超えません。
ニホンイタチの繁殖生態
繁殖期:交尾期4~5月ですが九州では年2回の可能性があります(参考文献4)。
1回の出産で1~8頭の子供が生まれます(平均3~5頭)。
ニホンイタチの生態的特性
雌は一定の行動圏を持ち、土穴などを巣とします(参考文献4)。
雄はいくつかの雌の行動圏に重なるような行動圏を持ちます。
カエル、ネズミ類、鳥類、昆虫類、甲殻類、魚類などを食べます。
シベリアイタチ(旧和名:チョウセンイタチ)とは
シベリアイタチ(Mustela sibirica)は、以前は元来の分布地(朝鮮半島)に由来してチョウセンイタチと呼ばれていましたが、「環境省レッドリスト2020」で和名がシベリアイタチに変更されました(参考文献5,6)。
ヨーロッパ東部~東アジアに広く分布し、日本では長崎県対馬だけに自然分布(在来分布)します。
この自然分布の長崎県対馬市の個体群は近年急激に数が少なくなっていて、対馬市の個体群のみ希少鳥獣に指定され、絶滅の恐れがあるとして保護対象となっています。
一方、同じシベリアイタチでも、対馬以外の地域(移入分布)のものは日本の侵略的外来種ワースト100にリストアップされるなど害獣として認識されています。
外来のシベリアイタチは1930~1940年代に兵庫県や九州に移入され、現在は福井、岐阜、愛知の各県を分布の東端として西日本に広く分布しています(参考文献7,8)。
シベリアイタチの形態的な特徴
全身の毛色は、冬はやや黄色がかった明るい褐色で、夏には綿毛が抜けてやや暗い色になります(参考文献7)。
目~鼻周辺に濃褐色の斑紋があり、鼻周辺~口~喉は白。
目の周辺は胴体と同じ色です。
雄(オス)のほうが雌(メス)よりもが体長が大きく、性差があります。
- 頭胴長:雄28~39 cm、雌25~31 cm
- 尾長:雄16~21 cm、雌13~16 cm
- 体重:雄650~820 g、雌重360~430 g
成体の尾率(尾長/頭胴長)は50%以上。
シベリアイタチの繁殖生態
繁殖期:4~5月に交尾、6~8月に育児(参考文献7)。
雌は年に1回、雄は多回交尾で一夫多妻と考えられています。
1回の出産で5~6頭の子供が生まれ、雌のみで育児をします。
シベリアイタチの生態的特性
雌は一定の行動圏を持ち、土穴等を巣とします(参考文献7)。
雄は何頭かの雌の行動圏に重なるような行動圏を持ちます。
春期に産まれた子供は秋には分散します
ネズミ類、鳥類、カエル、昆虫類、魚類、甲殻類、果実類を食します。
ニホンイタチに比べ植物質の採食量が多い傾向があります。
ニホンイタチとシベリアイタチを見分けることはできる?
シベリアイタチが分布しない西日本以外の地域でイタチに遭遇した場合、基本的にそのイタチの種類はニホンイタチになります。
一方、ニホンイタチとシベリアイタチの分布が重なる西日本では、イタチに遭遇した場合どちらかの種類になります。
でも、一般の人がニホンイタチとシベリアイタチを見分けることは可能なのでしょうか?
その答えは、「ほぼ不可能」になると思われます。
シベリアイタチはニホンイタチより大型とされていますが、個体差もあり体の大きさだけでこの2種を判別することは困難です。
背面の毛色や顔側面の毛色も違いがあるとされていますが、時期によって毛色が変化して判別が難しく、毛が濡れていると色がよくわからないことがあります(参考文献2)。
形態的な特徴から見分ける方法としては、尾率(尾長/頭胴長)が最も有効です。
2種の尾率は、46~49%の範囲で重複がありますが、尾率50%を超えるニホンイタチは報告されておらず、また尾率が45%以下のシベリアイタチも報告されていません(参考文献1,2)。
そのため、尾率45%以下であればニホンイタチ、尾率50%以上であればシベリアイタチと考えられます。
でも、イタチの尾率を一般の人が計測するのは困難ですよね。
そのため、専門家以外はニホンイタチとシベリアイタチを見分けることは「ほぼ不可能」ということなります。
西日本ではシベリアイタチの住居被害が多く発生
関西地域のイタチ駆除専門業者 アスワット(ASWAT)の駆除実績では、2011年から2017年にかけての7年間で合計530件のシベリアイタチの人家侵入被害があったことが報告されています(参考文献9)。
シベリアイタチは、平地に分布し、夜間だけでなく昼も活動し、人家を棲息場所とすることがあります。
9割以上の被害が都市圏で起きているそうです。
地域別では、大阪府が177件、兵庫県が164件(うち淡路島が4件)、滋賀県が73件、京都府が52件、奈良県が50件、和歌山県が11件、三重県が3件となっています。
関西での被害状況を紹介しましたが、シベリアイタチの分布(参考文献7,8)を考慮すると、中国地方、四国、九州などでもシベリアイタチによる被害が起きる可能性があります。
シベリアイタチが家屋の屋根裏(天井裏)などに侵入した場合、騒音による被害、糞尿による被害、家屋損傷の被害、ペットへの被害などが発生します。
シベリアイタチは、断熱材のグラスウールを巣材にするケースがあり(参考文献9)、断熱材の修繕費用が発生する可能性もあります。
西日本以外でもイタチによる住居被害の可能性はある
シベリアイタチが分布しない西日本以外の地域では、ニホンイタチによる住居被害の可能性があります。
ニホンイタチも人家の屋根裏(天井裏)などに侵入して、騒音による被害、糞尿による被害、家屋損傷の被害、ペットへの被害などを与える可能性があります。
イタチへの対処
シベリアイタチとニホンイタチの違いに関係なく、イタチが住宅に棲みついた場合は上記のような被害が発生するため早めに駆除することが大切です。
ただし、イタチは鳥獣保護法により無許可での捕獲や殺処理は禁止されています。
また、イタチを刺激すると咬まれたり、ひっかかれたりして怪我をすることや、傷口を介して感染症にかかる危険性もあります。
個人で対処しないほうが無難です。
イタチの駆除は、最初から害獣駆除業者に駆除をお願いするほうが賢明です。
多くの害獣駆除業者はイタチを駆除した後、糞などの清掃と消毒、侵入防止対策などを行ってくれ、安心して生活をおくれるようになります。
害獣駆除業者は複数から見積をとる
イタチの駆除を害獣駆除業者に依頼する場合は、まずは複数の業者に見積をとることをおすすめします。
害獣駆除業者によって料金や対処方法が異なるので、見積の内容や応対の様子からベストの害獣駆除業者を選択してください。
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これらを参考にして、複数の業者に見積をとってみてください。
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まとめ
ニホンイタチとシベリアイタチ(旧和名:チョウセンイタチ)についてご紹介しました。
シベリアイタチは西日本に分布し、ニホンイタチよりも平地で優位に立っています。
そのため、もし西日本に在住でイタチの被害にあわれた場合は、シベリアイタチによる可能性がとても高くなります。
一方、西日本以外の地域でイタチの被害にあわれた場合は、ニホンイタチが原因である可能性が高いです。
もしイタチが住宅に棲みついた場合は、シベリアイタチとニホンイタチの違いに関係なく早めに駆除することをおすすめします。
害獣駆除業者に依頼する場合は、まずは複数の業者に見積をとり、その中からベストの害獣駆除業者を選択してくださいね。
参考文献
- 落合啓二. 千葉県産イタチ(Mustela 属)の外部計測値に基づく同定. 千葉中央博自然誌研究報告 2011 11(2):15-18.
- 川口敏. 香川県産Mustela 属2種の事故死体の同定と分布. 哺乳類科学 2006 46:35-39.
- 鈴木聡. 神奈川県西部の狩川下流部におけるニホンイタチの生息状況. 神奈川県立博物館研究報告(自然科学) 2018 47:89-92.
- ニホンイタチ. 国立研究開発法人 国立環境研究所 侵入生物データベース(2021年10月28日 参照)https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/10320.html
- シベリアイタチの希少鳥獣指定について(案). 環境省. (2021年10月28日 参照) http://www.env.go.jp/council/12nature/y125-23b/14_mat3-1.pdf
- 【哺乳類】環境省レッドリスト2020. 環境省. (2021年10月28日 参照)https://www.env.go.jp/press/files/jp/114457.pdf
- チョウセンイタチ. 国立研究開発法人 国立環境研究所 侵入生物データベース(2021年10月28日 参照)https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/10180.html
- Sasaki H. Mustela sibirica Pallas, 1773. In Ohdachi, S. D., Y. Ishibashi, M. A. Iwasa and T. Saitoh (eds.), The Wild Mammals of Japan 2009 242-243. Shoukadoh Book Sellers, Kyoto.
- 斎藤昌幸ら. 都市における食肉目動物研究2. 哺乳類科学 2018 58(1):99-100.
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