机の引き出しの奥や本棚、押入れの奥などで、淡黄褐色で小さいけど細く長い脚をしたクモを見かけたことはありませんか?
そのクモの名前はシモングモかもしれません。
シモングモは、屋内性のクモで、小さな害虫であるコナダニやチャタテムシを捕食します。
シモングモが部屋にいるということは、コナダニやチャタテムシなどの害虫がいる証拠でもあります。
シモングモを部屋で見かけた場合は、コナダニやチャタテムシなどの害虫駆除をしたほうがよさそうです。
餌となる害虫がいなくなれば、シモングモも部屋で見ることはなくなります。
以下では、シモングモと、害虫のコナダニとチャタテムシの駆除方法を紹介します。
目次
シモングモ
学名:Spermophora senoculata (Dugès)
シモングモは、ユウレイグモ科に属し、成体の体長は2~3 mmです(参考文献1-3)。
体は全体的に淡黄褐色あるいは黄白色で、腹部は球形です。
体に比べて長い歩脚をもちます(脚をいれると1 cm程度の大きさになります)。
眼の数は6眼です。
押入れや机の下、納戸の中、家屋や塀の壁面、石垣の間や側溝の中、倉庫の積み荷の間などに小さい不規則網を張ります。
コナダニやチャタテムシなどの微小な獲物を捕食します。
1年中成体が見られ、冬季も成長途中の個体が存在します。
中東地域原産ですが、人為分布により日本全国をはじめ、世界中の温帯〜熱帯で見られます。
シモングモは気付かなかった害虫被害を教えてくれる
シモングモの好物はコナダニやチャタテムシなどの小さな害虫です。
シモングモがいるということは、その付近に害虫がいるということです。
コナダニ
コナダニは穀類、穀粉(小麦粉、きな粉、パン粉)、菓子類、味噌など数多くの食品に繁殖して加害します(参考文献1)。
昆虫の標本や畳にも繁殖します。
一般的にコナダニと呼ばれるダニは、コナダニ科に属するダニで、ケナガコナダニやサトウダニなど多くの種が含まれます。
コナダニの体長は0.5~0.8 mmで小さく、肉眼で発見するのは困難です。
コナダニ自身は人間の皮膚を刺したりすることはありませんが、コナダニを捕食するツメダニの繁殖につながります。
ツメダニは人間の皮膚を刺して、皮膚炎を引き起こします。
そのため、コナダニがいるせいで、ツメダニに刺されることになります。
コナダニは60℃以上1時間の熱処理で死滅します。
低湿度(相対湿度が60%以下)で死滅し、卵も発育しないとされています。
そのため、食品などは乾燥状態で(湿度を低くして)保存することが防除に有効です。
駆除には殺虫剤が効果的です。
チャタテムシ
室内にいるチャタテムシの多くはヒラタチャタテまたはカツブシチャタテです(参考文献1,4,5)。
両種は形態が類似し、淡褐色で、成虫の体長は1.0~1.3 mmと小さいです。
肉眼で確認でき、大きさなどから、よくダニと間違えられます。
屋内できわめて普通にみられ、畳の隙間、押入れの隅、台所の乾燥食品の中などにいます。
ほとんどすべての貯蔵食品をはじめ、動・植物標本なども食害します。
本も加害し、古い本を開いたときに見かけることがあります。
体は柔らかく、本を閉じたときに挟まれてつぶれてしまい、体液が本のシミになることがあります。
また、ハウスダストとしてアレルギーを引き起こすという報告もあります。
湿度が高い環境を好み、そこに生えているカビなどを食べます。
そのため、一番の対策は、風通しをよくして除湿することです。
シモングモが本棚付近にいるときは本にチャタテムシがいる?
上記のように、シモングモはチャタテムシを捕食します。
チャタテムシは本の虫(害虫)としても知られています。
本棚など本がある場所にシモングモがいる場合は、チャタテムシが本に被害を与えている可能性があります(参考文献6)。
そのため、シモングモを本棚付近で見かけた場合は、本にチャタテムシがいないか確認することをおすすめします。
もし本にチャタテムシがいた場合は、振り落とすなどの方法で本から除去し、粘着テープや殺虫剤で駆除しましょう。
部屋にいるシモングモへの対処
シモングモは害虫を駆除してくれる益虫です。
部屋にいてほしくない場合は、野外に逃がす方法があります。
ほうき、虫取り網などを使用すれば、直接触らずに済みます。
また、殺虫剤で駆除することもできます。
コナダニとチャタテムシの駆除
部屋にシモングモがいるということは、コナダニやチャタテムシなどの害虫がいる証拠でもあります。
コナダニやチャタテムシなどの害虫の駆除には、部屋の広範囲の駆除が行えるくん煙剤の使用がおすすめです。
ただし、コナダニとチャタテムシのくん煙剤は種類が違うので、別々に実施する必要があります。
また、卵には効かないため2週間後ぐらいにもう一度それぞれのくん煙剤を使用する必要があります(時間がたって卵からふ化した害虫を駆除)。
コナダニの駆除・防除におすすめ
ダニアースレッド(煙タイプで、煙の中の約80%がミクロの殺虫成分のため、広範囲に隅々まで届きやすい)
ダニアースレッド ノンスモーク霧タイプ(エアゾールが噴射され、煙が出ないことで、マンション等の集合住宅で使いやすい)
おすだけダニアースレッド 無煙プッシュ
家中の不快なダニ予防の効果があります(コナダニなどの屋内塵性ダニ類の忌避)
チャタテムシの駆除におすすめ
アースレッド イヤな虫用(しっかり駆除したい方におすすめ)
かんたんアースレッド ノンスモーク イヤな虫用(手軽に使いたい方におすすめ)
イヤな虫ムエンダー(面倒な事前準備が不要な空間噴射のワンプッシュ式でおすすめ)
駆除の専門業者に相談・依頼
コナダニやチャタテムシの完全駆除は簡単なことではありません。
自分で対処できない場合は専門業者に相談・依頼したほうが早いです。
駆除業者を探す場合は、複数の業者から相見積もりをとるようにしてくださいね。
まとめ
シモングモは体に比べて長い歩脚をもちます(脚を含めて1 cm程度の大きさ)。
体は淡黄褐色あるいは黄白色で、腹部は球形です。
屋内性のクモで、小さな害虫であるコナダニやチャタテムシを捕食してくれる益虫です。
また、シモングモの存在は、気付かなかった害虫被害を教えてくれます。
シモングモを見かけた場合は、室内にコナダニやチャタテムシなどの害虫がいるため、害虫駆除を行うことをおすすめします。
参考文献
- 安富和男, 梅谷献二. 原色図鑑/改訂・衛生害虫と衣食住の害虫. 全国農村教育協会 1995.
- 小野展嗣. 皇居のクモ類. 国立科博専報 2014 50:71-104.
- 小野展嗣. 自然教育園のクモ類. 自然教育園報告 2019 51:123-142.
- 吉澤和徳. チャタテムシの生物学[1]. インセクタリウム 1999 36(6):156-161.
- 吉澤和徳. チャタテムシの生物学[2]. インセクタリウム 1999 36(7):202-207.
- 濱田信夫, 山崎一夫. 本の虫と本のカビ. 2009 53(3):191-197.
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