アメリカフウロは、上に向かって細長く突き出した果実が特徴的です。
まるでSF映画などに出てくる砲塔のように突き出しています。
アメリカフウロの地上部は、ジャガイモなどで問題となる青枯病菌に対する抗菌成分を有しています。
果実の砲塔で攻撃とはいきませんが、抗菌成分で農業上問題となる青枯病菌を駆逐してくれそうです。
春から夏にかけてみられる小さく淡いピンク色の花も可憐です。
アメリカフウロ
アメリカフウロ(亜米利加風露)
学名:Geranium carolinianum
分類:フウロソウ科フウロソウ属
花期:5~9月
分布:北アメリカ原産、本州(宮城県以南)、四国、九州、沖縄に帰化
昭和の初期に渡来し、1932年に京都の南部で発見され、現在では日本に広く帰化している。
色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑(1)
茎はよく枝分かれし、基部ははって、先端が斜めに立ったり、他物によりかかりながら、高さ10~60 cmに育つ。
茎や枝の先に淡紅色から白色に近い色の5弁花を、2~6個咲かせる。
花は直径約1~2 cm。
果実は長さ1.7~2 cmで、直立する。
種子の表面には網目模様があり、果実は熟すと裂けて種子が飛ぶ。
空き地や道端、野原、土手などに生える越年草。
アメリカフウロの農業への活用
アメリカフウロの地上部は、ジャガイモなどで問題となる青枯病菌に対する抗菌成分を有しています(成分の1つはポリフェノールの一種である没食子酸エチル:Ethyl 3, 4, 5-trimethoxybenzoate)(2)。
アメリカフウロ乾燥物の土壌混和処理は、ジャガイモやトマトなどの青枯病の防除に有効であることが報告されています(2)。
アメリカフウロの民間薬としての使用
民間療法では、アメリカフウロは風邪の症状緩和に使用されていたようです(3)。
使用方法としては、夏季に採取して、全草を太陽に干し乾燥保存します。
沸騰させた水1 Lに、アメリカフウロの全草15 gを入れ、水が半分ほどになるまで煎じ、1日3回に分けて服用します。
中国では、アメリカフウロの地上部を水で煎じたものは利尿と止血効果があるとされ、下痢やリウマチ性関節炎の緩和にも使用されることがあるようです(4)。
アメリカフウロの抽出物(geraniin、hyperinなどが含まれる)は、いくつかの種類のウイルスに対して抑制効果があり、抗B型肝炎ウイルス(HBV)活性も報告されています(4)。
参考文献
- 高橋修, 藤井伸二(監修). 色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑. ナツメ社 2014.
- 大城篤. 植物と微生物の生物機能を利用した土壌病害防除技術に関する研究. 沖縄県農業研究センター研究報告 2009 2:30-80.
- 廣部千恵子. 日本の民間薬2(風邪に使用する民間薬2-食物および薬草). 清泉女子大学紀要 2000 48: 5-112.
- Li J et al. Anti-hepatitis B virus activities of Geranium carolinianum L. extracts and identification of the active components. Biol Pharm Bull 2008 31(4):743-747.