部屋にまだら模様の小さな虫がいたら害虫のヒメマルカツオブシムシの可能性があります。
ヒメマルカツオブシムシは、4月~5月ごろに成虫となり、幼虫は衣類の虫食い原因となります。
秋・冬の衣替えの時期には幼虫を発見することもあるかもしれません。
残念ながら我が家ではヒメマルカツオブシムシが発生してしまいました。
私と同じようにヒメマルカツオブシムシをご自宅で発見される方もいると思うので、虫の特徴や対処法に関して調べたことをご紹介します。
目次
我が家のヒメマルカツオブシムシの発生事例
4月中旬のある日、部屋の中にてんとう虫を小さくしたような虫が数匹いるのに気づきました。
写真を撮って拡大してみると、茶色と白のまだら模様。
この特徴をもとに調べると、この虫はヒメマルカツオブシムシでした。
ヒメマルカツオブシムシは、4月~5月ごろに成虫となり、幼虫は衣類の虫食い原因となる害虫です。
残念ながら、我が家ではヒメマルカツオブシムシの幼虫が成虫となったようです。
同じようにヒメマルカツオブシムシをご自宅で発見される方もいると思うので、ヒメマルカツオブシムシとその対処に関して調べたことを紹介します。
ヒメマルカツオブシムシの成虫(まだら模様の小さい虫)の特徴

ヒメマルカツオブシムシ(学名:Anthrenus verbasci)
成虫は短楕円形で体長2~3 mmの小さな甲虫です(参考文献1)。
体色は地肌が黒色で、その上に白・黄・褐色の短い毛が様々な割合でモザイク状に生えています(そのため、まだら模様に見える)。
背中の模様は個体によって違いがあり、同種とは思えないほど多様性があります。
翅(はね)を広げて飛翔することができます(120 m程度飛行可能)。

ヒメマルカツオブシムシの成虫が部屋にいる理由
ヒメマルカツオブシムシの成虫が部屋にいる理由は主に2つ考えられます。
理由1:幼虫が室内で生育して成虫になった

1年前(またはそれ以前)に屋外から室内に成虫が侵入し、産卵、幼虫、蛹(さなぎ)の過程を経て、成虫になった場合、室内で見かけることになります。
ヒメマルカツオブシムシは蛹から羽化すると、暗い場所で交尾・産卵し、その後に窓などの光に向かって飛翔するようになります(参考文献1)。
姿を見つけるころには、室内のどこかで産卵済みらしいです。
1匹の雌成虫の産卵数は30~70粒(参考文献1)。
何も対処しないと衣類などの虫食いが発生し、来年の4月頃にまた成虫を見つけることになります。
(我が家は同じ日に4匹発見したので、多分こちらの理由)
理由2:外から室内に入り込んだ

ヒメマルカツオブシムシの成虫は、白っぽい花(チューリップ、ハルジオン、ヒメジオン、フランスギク、マーガレット、コデマリなど)に飛来する習性をもっています(参考文献1)。
この成虫は花だけに飛来するのではなく、屋外に干している洗濯物や布団などの白いものに飛来し、室内に入り込む場合があります(参考文献1,2)。
また、外出先で衣服に付着してそのまま室内に持ち込まれるケースもあります。
庭に咲いている花、植木屋や生花店で買い求めた花を室内に持ち込む時に付着していることも。
神奈川県横浜市と座間市で成虫の野外飛来時期を調査した結果では、4月中旬~6月下旬(とくに多い時期は4月下旬~6月上旬)が飛来時期となっています(参考文献1)。
外から室内に入り込んだ雌の約10%は産卵能力を持っているため(参考文献2)、そのままにしておくと室内のどこかで産卵する可能性があります。
室内のヒメマルカツオブシムシ成虫の駆除

上記のいずれの理由であっても、成虫は室内でさらなる産卵を行う可能性があります。
見つけたら速やかに室内から駆除することをおすすめします。
駆除の方法は、屋外に逃がす、または殺虫剤などを使用して駆除することになります。
成虫はサイズも小さく、動きも早くないので、比較的対処しやすいと思います。
もちろん刺したりすることはありません。
また、成虫は植物質(花粉や花の蜜)のみを好むので、成虫の状態では衣類の虫食いは発生しません(参考文献1)。
産卵場所を探すのは難しい

成虫はフランネル布のような表面がケバ状でふっくらしたものを好み産卵します(参考文献1)。
一方、ガラスのようなスベスベしたところには余り産卵しません。
しかしながら、卵は約0.6 mmの楕円形・乳白色なので、肉眼で発見するのは困難です。
幼虫が生育すると虫食いが発生

卵は1~3週間でふ化します(参考文献1)。
幼虫は、乾燥した動物性タンパク質を好みますが、乾燥した物質であれば何でも食してみるという習性をもちます(参考文献3)。
屋内では主に衣類繊維や一部の食品を摂食するため衣類害虫や貯穀害虫として知られています(参考文献3)。
衣類繊維の中では、羊毛を最も好みます(参考文献4)。
絹、レーヨン、キュプラ、アセテートなども食しますが、木綿、化学性繊維はあまり好みません(参考文献4)。
幼虫による食害の様子は、表面を一様に食べる傾向がありますが、一か所で長く食べ続けたり、あちこち動き回ったりして、食害の跡は製品の表面全体に散らばり、ついには穴をあけます(参考文献4)。
食い破った毛製品、脱皮殻などを集めて巣のようなものを作って、この中に身を隠す習性があります(参考文献4)。
幼虫は明るいところよりも暗いところを好む習性があるために、被服を重ねて保存した場合、下のほうにもぐって、下の方の布の被害が最も大きくなります(参考文献4)。
なお被服に汚れや、しみがついているとその部分から食害が大きくなり、とくに尿や汗、トマトジュース、ビールなどにその傾向が顕著にみられます(参考文献4)。
幼虫1頭あたりの食害量は約6 mgで、7月上旬ごろに食害が盛んになります(参考文献4)。
ヒメマルカツオブシムシの幼虫の特徴

ふ化直後のヒメマルカツオブシムシの幼虫は乳白色で体長約0.8 mmです(参考文献1)。
幼虫期間は8~10か月でこの間6~8回脱皮して成長し、幼虫で冬を越します。
老熟幼虫は細長いだるま形で、体長約4.5 mmです。
淡褐色で、全体は短毛におおわれ、末端には2つの長い毛束が出ています。
(衣替えの季節に、服の整理中に幼虫に遭遇することがあります)
幼虫は毒を有しておらず、咬んだり刺したりすることはありません。
ただし、幼虫の毛(鎗状毛と呼ばれます)は触れると抜けやすく、外敵にからみつきます(アリの場合、がんじがらめにしばりあげられたような形で身動きできなくなります)(参考文献5)。
毛に毒はありませんが、幼虫を見つけた場合は、素手で触らないほうがよいです。
(手袋、ティッシュペーパー、粘着テープ、割りばし、掃除機などを使って取り除いてください)
越冬した幼虫は、3~4月に蛹となります。
蛹は飩紡鐘形で、体長3~5 mm、淡黄色です。
蛹になって2~4週間で羽化し成虫となります。
虫食い被害の防止
衣類の保管場所の掃除
室内でヒメマルカツオブシムシの成虫を見かけた場合は、タンスなどの衣類の保管場所を掃除します。
衣類の虫食いやヒメマルカツオブシムシがいた痕跡(死骸、脱皮殻、体毛、排泄物など)が見つかった場合は、掃除機などを使って隅々まできれいにしてください。
アイロンがけと圧縮袋の利用
大切な衣類を中心にアイロンをかけておくと安心です。
アイロンの熱で卵や幼虫を駆除することができます。
保存の際は、圧縮袋を使用すると幼虫の侵入を防げます。
防虫剤
タンスなどに衣類をしまう時は、防虫剤を入れておきます。
防虫剤は、タンス用、クローゼット用、衣装ケース用など用途に合ったものを選び、メーカーの指示通りの薬量を使用してください。
防虫剤は多種類を混用すると液化して流れ出し、シミや変質の原因になるため同一の防虫剤を使用してください。
クリーニングと長期保管サービスの利用
毛皮や着物などの高価な繊維製品はクリーニングに出し、業者の長期保管サービスを利用すると安心です。
おすすめは長期保管サービスのついた宅配クリーニングです。
店舗に行く必要はなく、自宅から宅配で送り、クリーニング後は必要な時期まで保管してくれます。
駆除の専門業者に相談・依頼
ヒメマルカツオブシムシの繁殖場所は衣類とは限りません。
ヒメマルカツオブシムシの幼虫は、乾燥した動物性タンパク質を好みます。
ダンボール箱の中の毛皮の切れ端、カーペットから出る毛屑のたまっている家具のうしろ、室内の昆虫の死骸など、部屋の様々なところが繁殖の場所となっている可能性があります(参考文献4)。
そのため、ヒメマルカツオブシムシの完全駆除は大変な場合があります。
自分で対処できない場合は、専門業者に相談・依頼したほうが早いです。
まとめ
ヒメマルカツオブシムシの成虫は、4月中旬~6月下旬に室内へ侵入する可能があるので、室内へ持ち込まないように注意が必要です。
一方、4月頃に室内で複数のヒメマルカツオブシムシの成虫を発見した場合は、室内で繁殖している可能性があります。
ヒメマルカツオブシムシの成虫を駆除し、虫食い被害の防止対策をすることをおすすめします。
参考文献
- 中元直吉. 虫害. 繊維製品消費科学 1997 38(8):416-423.
- 田中良子. 衣類の害虫と被害・保管について. 繊維製品消費科学 2004 45(4):264-271.
- 諏訪晴香ら. ヒメマルカツオブシムシAnthrenus verbasci幼虫の繊維への嗜好性. 帝京科学大学紀要 2013 9:147-149.
- 辻井康子. 被服の保存と虫害. 繊維製品消費科学 1978 19(1):20-27.
- 安富和男, 梅谷献二. 原色図鑑/改訂・衛生害虫と衣食住の害虫. 全国農村教育協会 1995.
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