紫と白、オレンジの色の組み合わせのサギゴケ(ムラサキサギゴケ)の花は、どこか怪しい雰囲気が漂います。
花の下唇の奥に雌しべがあり、刺激により開閉する柱頭運動をする特徴があります。
春に開花し、田のあぜのような湿った土壌で、匍匐茎を伸ばして生育します。
サギゴケ
サギゴケ(鷺苔)
学名:Mazus miquelii
別名:ムラサキサギゴケ
分類:サギゴケ科サギゴケ属
花期:4~5月
分布:本州、四国、九州
紫色の小さな花の形が翼を広げたサギを思わせ、苔のように地面に広がるのが名前の由来。
色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑(1)
高さ10~15 cmの花茎に、長さ1.5~2 cmの淡紫色~紅紫色の花をまばらにつける。
花は筒状で先端は上下に分かれ、下唇のほうが大きく黄色と赤の斑紋がある。
雌しべの先はへら形で上下に分かれ、触れると閉じ、しばらくすると開く柱頭運動をする。
花の終わるころから地をはう枝を伸ばして広がる。
サギゴケ科は比較的新しい分類群
サギゴケの属するサギゴケ科はChaseらによって2016年に新設された比較的新しい分類群です(2,3)。
外部形態を基にしていた従来の分類体系から、遺伝情報に基づく分子系統解析へと変化し、分類の見直しが行われた結果となります。
湿った土壌を好む
サギゴケは湿った水田のあぜなどに生育します(4)。
(写真のサギゴケは公園の日陰になりやすい湿った土壌に生育していました)
5~9月頃にコケのように走出枝が地をはうように生育します。
花の色が白色となるサギゴケ(同種)もあり、紫色のサギゴケは区別してムラサキサギゴケと呼ばれることも多いです。
サギゴケの柱頭運動
サギゴケの雌しべの先は、へら形で上下に分かれ、触れると閉じ、しばらくすると開く柱頭運動(柱頭傾振性運動)をします。
雌しべの先は花の少し奥まった場所にあります。
(そよ風のなかで Part2さんのサイトhttps://soyokaze2jp.blogspot.com/2015/04/blog-post_6.htmlに柱頭運動の素晴らしい写真があります)
雌しべの先が刺激を受けて柱頭運動により閉じるまでの時間は16~21秒(夜間は約13秒)、再び開くまでの時間は7~9分(夜間は10~12分)であることが報告されています(4)。
この柱頭運動は受粉によって早急に失われ、柱頭分岐は閉じたままとなります。
参考文献
- 高橋修, 藤井伸二(監修). 色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑. ナツメ社 2014.
- Chase MW et al. An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV. Botanical Journal of the Linnean Society 2016 181(1):1-20.
- 山本将也. 京都御苑固有植物カワセミソウ(サギゴケ科)の系統的位置付け. 兵庫教育大学 研究紀要 2020 56:189-193.
- 第2章 ゴマノハグサ科サギゴケ属雑草の生活史. http://www.milletimplic.net/weedlife/quatplants/chap2Mazus.pdf