車に乗ってエアコンをつけると臭いニオイがすることがあります。
特に梅雨時や夏に起こりやすいですよね。
ニオイは、酸っぱいニオイだったり、洗濯物の生乾きのようなニオイだったり。
自動車によって違うかもしれませんが不快なことに変わりありません。
この不快なニオイが発生する主な原因は、車を使用しない夜間などの駐車中にカーエアコン内(特にエバポレーター付近)で細菌が増殖することにあります。
車に乗ってエアコンをつけると、駐車中に細菌の増殖にともなって発生した不快なニオイがエアコンの風に乗って車内に一気に広がり、ニオイを強く感じることになります。
ニオイの発生を抑えるためには、エバポレーターの洗浄、エバポレータークリーナーの使用、わさび成分を利用した抗菌製品の利用などにより細菌の活動を抑制する必要があります。
目次
カーエアコンのエバポレーター付近で細菌が増殖
カーエアコンの部品の中で、細菌が増殖しやすいのはエバポレーター(熱交換器)付近です(参考文献1)。
梅雨時や夏季に冷房を使用すると、エバポレーターでは結露水(凝縮水)が発生します。
またエアコンの通風により、エバポレーター付近には細菌の栄養となる有機物が車内外から供給されます。
エバポレーター付近では、結露水と有機物を利用して細菌が増殖し、不快なニオイが発生します。
車のエアコンをつけた直後が臭い理由
冷房を使用した車を駐車しておくと、エバポレーターの結露水の影響でカーエアコン内の湿度は90%以上となり、細菌の増殖に適した環境になります(参考文献1)。
駐車時間が長い夜などの間にエバポレーター付近で細菌が増殖し、不快なニオイが発生します。
車に乗ってエアコンをつけると、駐車中に発生した不快なニオイがエアコンの風に乗って車内に一気に広がり、ニオイを強く感じることになります。
一方、カーエアコンをしばらくつけていると、エバポレーター付近に蓄積していたニオイ成分が拡散して少なくなり、カーエアコンからのニオイは軽減されます。
エバポレーターに存在する細菌
カーエアコンのエバポレーターに存在する主要な細菌は、バイオフィルムを形成することができるメチロバクテリウム(Methylobacterium)属細菌です(参考文献2,3)。
バイオフィルムは付着性の生物膜のことで、例えるなら細菌の住居のようなものです。
様々な外的要因(乾燥、殺菌作用のある物質、水に流されることなど)から内部に住む細菌を保護します。
このバイオフィルムには、メチロバクテリウム属細菌だけでなく他の様々な細菌が一緒に住む(共存する)ことができます。
そのため、他にもSphingomonadales目細菌、Burkholderiales目細菌、Bacillales目細菌、Alcanivorax属細菌、Stenotrophomonas属細菌など多様な細菌がバイオフィルム内に存在します(参考文献2,3)。
メチロバクテリウム属細菌だけでも不快なニオイは発生しますが(参考文献2)、バイオフィルムに存在する細菌集団の構成によって様々なニオイ(酸っぱいニオイや洗濯物の生乾きのようなニオイなど)が発生します。
車によって不快なニオイが異なるのは、細菌集団の構成が異なるためです。
メチロバクテリウム属細菌は、お風呂などで発生するピンク汚れの原因でもあります。関連記事「お風呂のピンク汚れの原因はカビじゃない?本当の原因を知って対処!」でもメチロバクテリウム属細菌について説明しているのでよかったら読んでみてください。
カーエアコンからの不快なニオイを抑えるには?
ニオイの発生を抑えるためには、エバポレーターの洗浄、エバポレータークリーナーの使用、わさび成分を利用した抗菌製品の利用などにより細菌の活動を抑制する必要があります。
エバポレーターの直接洗浄
エバポレーターを車から取り外して直接洗浄することによりニオイの抑制が期待できます。
エバポレーターに付着したバイオフィルムを物理的に取り除くことが可能で、効果的な方法です。
ただし、エバポレーターの取り外しと洗浄は素人には困難なので、専門業者に依頼する必要があります。
エバポレータークリーナー
エバポレータークリーナーを使用すると、エバポレーターを取り外さずに洗浄することができます。
取り外して直接洗浄することに比べると、洗浄力は落ちますが手軽に実施可能です。
大手カー用品店やカーディーラーなどでも実施してもらえますが、自分で購入して実施することもできます。
わさびデェール(抗菌製品)
わさび成分(アリルイソチオシアネート)は細菌に対して抗菌活性があります。
わさびデェールは、エアコン内にアリルイソチオシアネートを徐放させ、長期間にわたって抗菌してくれます。
カーエアコン内の細菌数を低下させ、不快なニオイの発生を抑制する効果が期待できます(参考文献1)。
わさびデェールは自分で購入して取り付けることができます。
もし、わさびデェールを使用される場合は、エアコンのフィルターの交換も一緒に検討してみてください。
まとめ
冷房を使用した車を駐車しておくと、カーエアコン内(特にエバポレーター付近)で細菌が増殖し、不快なニオイが発生します。
車に乗ってカーエアコンをつけると、駐車中に発生した不快なニオイがエアコンの風に乗って車内に一気に広がり、ニオイを強く感じることになります。
これが車のエアコンをつけた直後に臭いニオイがする理由です。
ニオイの発生を抑えるためには細菌の活動を抑制する必要があり、エバポレーターの洗浄、エバポレータークリーナーの使用、わさび成分を利用した抗菌製品の利用などの対処法が有効です。
参考文献
- 原慎一. 車室内のにおい. におい・かおり環境学会誌 2011 42(6):392-398.
- Diekmann N et al. Microbial communities related to volatile organic compound emission in automobile air conditioning units. Appl Microbiol Biotechnol 2013 97(19):8777-8793.
- Park C et al. Dominance of gas-eating, biofilm-forming Methylobacterium species in the evaporator cores of automobile air-conditioning systems. mSphere 2020 5(1):e00761-19.
<おすすめ記事>