黒い球のような果実を複数つけるイヌホオズキ。
イヌホオズキには外見が似ているオオイヌホオズキなどがあり、同定が難しいです。
写真で紹介する個体は、オオイヌホウズキかもしれないと迷いましたが、果実の中の種子の大きさ(約2 mm)や、種子の数が39個であったことと、果実中に顆粒がないことからイヌホオズキと同定しました。
イヌホオズキは全草に有毒成分を有していて、果実にも有毒成分があります。
子供などが果実で遊ばないように注意が必要です。
イヌホオズキ
イヌホオズキ(犬酸漿)
学名:Solanum nigrum
分類:ナス科ナス属
花期:8~10月(5月頃に咲く可能性もあり)
分布:日本全土
イヌホオズキの特徴
日当たりを好み、山道、荒れ地、道端、家の周辺にも自生します(参考文献1,2)。
草丈は50~80 cmになり、多くの枝を斜状に伸ばし大株になることがあります。
葉は厚手で長く、ふちに波形の鋸歯があります。
花の色は白が多く、葯の長さは2~3 mmです。
果実の形状は球形、またはやや縦長の楕円になることがあり、直径が8 mm程度になります。
果実は熟すと黒くなり、鈍く光りを反射しますが艶はありません。
果実にフケ状の斑紋はなく、蕚片は果実に密着するか軽く反り返る程度です。
種子は1.8 ~ 2.5 mmで、果実には25~45個程度含まれています。
果実内には基本的に顆粒は含まれませんが、まれに微小なものが1~2個含まれます。
イヌホオズキとオオイヌホオズキの違い
イヌホオズキとオオイヌホオズキは花や果実の外見が似ており、判別が難しいです。
判別するには果実の中の種子の情報が有用です。
イヌホオズキ(参考文献1)
種子のサイズ:1.8~2.5 mm
種子の数:25~45個
顆粒:なし(まれに1~2個)
オオイヌホオズキ(参考文献1)
種子のサイズ:1.0~1.3 mm
種子の数:60~120個
顆粒:4~8個
イヌホオズキは毒草
イヌホオズキは全草に有毒成分(ソラニンなどの神経毒)を有しています(参考文献1,2)。
子供が遊んでいて果実をつぶした液が目に入った事故もあるので、注意が必要です(参考文献2)。
イヌホオズキは薬草としての一面もある
イヌホオズキは、民間薬としても利用されることがあります。
夏から秋にかけて全草を取って乾燥させたものを生薬名で竜葵(リュウキ)といい、解熱や利尿に利用されます(参考文献2)。
使用の際には漢方医への相談が必要です。
参考文献
- 森昭彦. 帰化&外来植物 見分け方マニュアル950種. 秀和システム 2020.
- 前山和彰. 身近にある毒草 9題. 生涯学習研究と実践:北海道浅井学園大学生涯学習研究所研究紀要 2003 5:211-220.