ペットボトルや作り置きのお茶の中に、ふわふわと白い糸くず状の浮遊物がありませんか?
大きくなるとマリモのように見えることも・・・。
それ、カビの塊です!!
何かあったら大変なので飲まずに廃棄しましょう。
もし飲んでしまったら、慌てずに体調の変化に注意して過ごしてください。
カビが混入した飲料を飲んでも健康被害がないことが多いようです。でも、体調が悪い場合は早めに医療機関を受診してください。
お茶などの飲料の中でカビを増やさないためには、冷蔵保存と短い期間で飲み切ってしまうことが大切です。
以下では、ライフサイエンス系博士(本ブログの管理人)が飲料中のカビなどについて解説します。
目次
飲料の中の白い糸くず状の浮遊物(マリモ)はカビ


カビの細胞は、分岐のある糸状(菌糸)であるため糸状菌とも呼ばれます。
糸状の菌糸が成長するに従って枝分かれし、これらの枝が絡まって繊維の塊のような菌糸体ができます。
お茶などの中でみられるのはこの菌糸体が大きく成長したものです。
またカビは成長すると胞子を形成します。
お茶などにみられるカビの種類

お茶などから検出されるカビの種類としては、Cladosporium(クラドスポリウム)属真菌(クロカビ)やPenicillium(ペニシリウム)属真菌(アオカビ)、Aspergillus(アスペルギルス)属真菌などが多いようです(参考文献1)。
たまに開封前のペットボトルなどでもカビの混入があるので、飲む前には白い糸くず状のカビが浮遊していないか確認してくださいね(参考文献1)。
Penicillium属真菌とAspergillus属真菌の中にはカビ毒(マイコトキシン)を産生する種が存在することから(参考文献2)、カビが目視で認められる飲料は飲まないでください。
もし、カビの混入が認められる飲料を飲んだら?

上記でカビ毒の話をしましたが、カビ毒をつくるのは一部のカビです。
多くのカビはカビ毒をつくらないので、カビの混入が認められる飲料を飲んでも特に健康被害がないことが多いようです。
真菌汚染に関する苦情・事故食品についての全国調査に関する文献(参考文献2)では、カビで汚染された飲食を摂取して健康被害を訴えたのは全体の18%だったことが報告されています。
つまり、82%の人はカビの混入が認められる飲料などを摂取しても特に健康被害がなかったことになります。
一方、健康被害を訴えた人は以下の症状があったようです(参考文献2)。
- 下痢
- 腹痛
- 悪心
- 嘔吐
- 発熱
- 不快感
- 舌・口・唇のしびれ
もし、カビの混入が認められる飲料を飲んでしまった場合は焦らずに体調の変化に気をつけて過ごしてください。
体調不良がある場合は医療機関を早めに受診してください。
どこからカビが混入?
ペットボトル開封前にカビが認められる場合
ペットボトルを開封していないのにカビの浮遊が認められる場合は、ペットボトル飲料の製造工程でカビが混入した可能性があります。
ペットボトル開封後にカビが認められる場合
先ほど紹介したCladosporium属真菌やPenicillium属真菌、Aspergillus属真菌などのカビは、室内などの私たちの身近な生活環境中に普通に存在しています。
ペットボトル飲料のフタを開けて置いていた間に、空中を漂っていたカビの胞子が飲料の中に落ちて増殖した可能性があります。
作り置きのお茶にカビが認められる場合
作り置きのお茶を水出しで作った場合は、使用した茶葉由来のカビかもしれません。
茶葉からカビ(またはその胞子)が検出されたことが論文で報告されており(参考文献3)、水出しで作ったお茶の保存状態が悪い(例えば冷蔵せずに室温で保存する)場合はそのカビが増える可能性があります。
また、お茶を入れている容器がカビに汚染されている可能性や、フタを開けて置いていた間に空中を漂っていたカビの胞子がお茶の中に落ちて増殖した可能性もあります。
カビ(マリモ)が増えたペットボトル飲料や作り置きのお茶の捨て方
カビ(マリモ)が増えたペットボトル飲料や作り置きのお茶は飲まずに捨てましょう。
カビの量が少ない場合は、そのまま流しに廃棄してください。
カビの量が多い場合は、三角コーナー用の水切りネットやコーヒー用のペーパーフィルターなどでカビを分けて、ビニール袋に入れて封をした後に燃やすごみ(可燃ごみ)に捨ててください。
飲料を流しに捨てた後は、流しに水道水をしっかり流してくださいね。
また、カビが増えたペットボトル飲料や作り置きのお茶は流しに捨てずにトイレに流して捨てる方法もあります。
ペットボトル容器は再利用せずに燃やすごみ(可燃ごみ)に捨ててください。
作り置きのお茶用の容器はできれば廃棄したほうがいいと思います。
もし作り置きのお茶用の容器を再利用したい場合は、しっかり洗浄した後に台所用漂白剤(キッチンハイターなど)や60℃以上のお湯(可能なら熱湯、10分程度つける)などを使用して除菌してください。
カビを増やさないように飲料を保存するには
ペットボトル飲料などの場合、フタを開けて置いておくと空気中のカビの胞子が飲料に混入する確率が高くなります。
フタはこまめに閉めて、カビの混入を防いでください。
お茶などの飲料の中にカビが目で見える大きさで存在する場合は、カビだけでなく細菌も増えている可能性があります。
カビや細菌は生育に適した室温では速く増殖し、生育に適していない低温ではあまり増殖しません。
カビや細菌を増やさないように飲料はなるべく冷蔵庫の中で低温(冷蔵)の状態で保存してください。
また、保存期間が長くなるとカビや細菌が増えてしまいます。
冷蔵保存した場合でも2, 3日以内には飲み切ってしまいましょう。
まとめ
ペットボトル飲料や作り置きのお茶の中でカビが増殖することがあります。
カビは白い糸くず状の浮遊物やマリモのように見えます。
カビの混入が認められるお茶などの飲料は飲まずに廃棄しましょう。
もし飲んでしまって体調不良となった場合は早めに医療機関を受診してください。
カビを増やさないためにも、飲料は冷蔵保存して、短い期間で飲み切るようにしてください。
参考文献
- 工藤由紀子ら. 清涼飲料水における微生物を原因とする苦情事例の解析. 食品衛生学雑誌 2009 50(6):315-320.
- 酒井綾子ら. 真菌汚染による苦情食品とその喫食による健康被害. 食品衛生学雑誌 2004 45(4):201-206.
- 岡崎貴世. 水出しで作る冷茶の保存性. 茶業研究報告 2016 122:21-25.
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