冬の寒さが和らいだ春先に、窓を開けていない部屋にてんとう虫が数匹いることはないですか?
私の部屋は毎年春先になるとてんとう虫が数匹出現し、すべて窓から逃がしても翌日にはまた出現します。
1日に3~5匹程度、ワンシーズンで50匹以上になります。
たぶん部屋の中、またはとても近くで越冬したのでしょう。いったいどこに潜んでいたのやら?
出現するのは家の2階にある北西側の部屋と決まっています。
部屋に出現するてんとう虫の多くは、黒い体に赤い点が2つあるてんとう虫。
特徴からナミテントウのようです。
ナミテントウなどのてんとう虫は、アブラムシなど食べてくれる益虫で、直接的な害もないので見つけたら逃がしています。でも、たくさん部屋にいるとあまり良い気持ちはしません。
気づかずに踏んでつぶしたくもありませんし・・・。
そこでナミテントウについて調べ、対処方法を考えてみました。
部屋にいるてんとう虫はナミテントウかも

ナミテントウはてんとう虫の1種で学名は Harmonia axyridis です(参考文献1,2)。
成虫の体長は4.7~8.2 mmで、てんとう虫の中では比較的大型となります。
背中の模様は黒い体に赤い点が2つある模様(黒地二紋型)をはじめ、様々な模様(四紋型、斑型、紅型)になることがあります(遺伝的多型が原因)。
日本全土でみられ、アブラムシを捕食する益虫です。
アブラムシの天敵昆虫であることから、生物農薬としても販売されているそうです。
寿命は1年以上あり、集団で越冬する習性があります。
越冬した成虫は3月下旬から活動を開始します。
成虫は気温が30℃を超えると呼吸量が低下して夏眠状態になるため、7月中旬には一度姿が見られなくなります。
その後、気温が低下した9月中旬から夏眠からめざめ活動を始めます。
ナミテントウの飛来集合

2008年に発表された研究論文によると、秋の終わり(11月中旬~12月初旬)の晴れた日のお昼ごろ、日当たりの良い場所に多くのナミテントウが越冬のため飛来し集合するそうです(参考文献3)。
また、ナミテントウたちは、白っぽい色や明るい色を好んで目標として飛んでくることが報告されています(参考文献4)。
私の家の外壁は黄色で、ナミテントウが出現する北西側の部屋は午後の日当たりが良好です。
秋の終わりに私の家の日当たりのより黄色い外壁を目指してナミテントウが飛来集合しているのかもしれません。
飛来集合したナミテントウは、その後建物の暗所に移動し、集団で越冬するそうです(参考文献5)。
そのため、冬の間はもしかすると窓枠周辺などの暗所に集団で潜んでいるのかもしれません。
ナミテントウへの対処
ナミテントウについて調べた結果、上で書いたようにナミテントウは11月中旬~12月初旬に飛来集合する習性があるようです。
この飛来する時期にあわせてナミテントウが嫌がる虫よけ(忌避性)効果のある殺虫剤を窓枠と窓周辺の日当たりの良い外壁に噴霧しておけば、春先にナミテントウが部屋に出現するのを防ぐことができそうです。
以下は具体的な対処方法です。
ナミテントウが部屋に出現することを防ぐ対処方法
対処:虫よけ効果のある殺虫剤を窓枠と窓周辺の日当たりの良い外壁に噴霧
場所:例年ナミテントウが出現する部屋
時期:11月初め(または10月終わり)
虫よけ効果のある殺虫剤としては外壁に使用でき、効果が60日ある虫こないアースが候補として挙げられます。
虫こないアース(アース製薬)
まとめ
春先に部屋に大量出現するてんとう虫(ナミテントウ)について調べ、対処法を考えてみました。
ナミテントウが飛来集合する前の、11月初めごろに虫よけ効果のある殺虫剤を窓枠と窓周辺の外壁に噴霧しておけば、春先にナミテントウが部屋に出現するのを防ぐことができそうです。
もし、あなたの部屋が私部屋と同じような状況でしたら、この対処法を検討してみてください。
編集後記
今回、ナミテントウのことを調べて、ナミテントウが夏眠をすることを初めて知りました。
ナミテントウは、ソメイヨシノやシイ類の重なった葉の間などで、集団ではなく1匹単位で夏眠をすることが報告されています(参考文献6)。
夏の暑い時期は大勢よりも一人のほうが過ごしやすいのかもしれませんね。
参考文献
- 新美輝幸ら. ナミテントウの遺伝子機能解析システムの現状と将来. 蚕糸・昆虫バイオテック 2006 75(3):175-182.
- 野村哲郎ら. テントウムシ集団の遺伝学的研究 (平成16年度共同研究プロジェクト研究成果報告) — (バイオリージョナリズムに基礎をおく京都の自然と生活文化に関する調査およびその展開). 京都産業大学総合学術研究所所報 2005 3:131-148.
- 善養寺聡彦. 累積低温量の考え方に基づいたナミテントウ(Harmonia axyridis)の晩秋の 飛来集合時期の予測. 昆蟲 (ニューシリーズ) 2008 11(4):159-167.
- Obata S. Determination of hibernation site in the ladybird beetle, Harmonia axyridis PALLAS (Coleoptera, Coccinellidae). Kontyû 1986 54(2):218-223.
- 桜井宏紀ら. ナミテントウの発生消長と越冬休眠行動. 岐阜大学農学部研究報告 1993 58:51-55.
- 桜谷保之, 松本宣仁. 近畿大学奈良キャンパスにおけるテントウムシ相. 近畿大学農学部紀要 2002 35:1-11.
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